靴屋に厳しい要求をしよう


 靴屋で、このデザインの黒でサイズは23をください。こんな買い方をしていませんか。これでは駄目で、このデザインの黒で私に合った木型のものを下さいと言うべきです。本当はお客様が木型のことやサイズを言わなくても、販売員は足許をちょっと見れば見当を付けなければいけないのですが。シューフィッターがいる店では木型の特徴を説明してもらいましょう。踵の小さめな人には細めな木型で、踵の大きめな人には広めな木型が用意されていて、はじめてシューフィッターの出番があるのです。ところがそれがされていないので、デザインと色の構成だけで適当に販売している靴の中からサイズを選び、勧めるだけで終わります。本来のシューフィッターの役目をしていません。例えば男性がワイシャツを欲しいとき、首まわり、袖丈、ウエストの組み合わせが合っていなければ購入しません。靴の場合も同じことが言えます。踵の周囲、土踏まず、指の側面、トウの余裕がその人に納得出来るものでなければ、本来履物の役目は十分に発揮できません。まずお足の長さ(足長)を知っておく必要があります。敷居で計ると簡単です。踵を柱に軽くつけて敷居上の一番長い指の先端下に鉛筆で印をつけ、柱から距離を計れば足長が判ります。そのサイズで踵周囲、土踏まず、指の側面にフィット感があり、爪先に問題がなければ、結果は最高の靴選びになります。
 残念ながら日本では木型構成がされていません。売りやすい平均的木型か、デザインを強調するための木型になっています。特にお足の細すぎる人と広すぎる人は災難です。永遠に満足できる靴がありません。消費者は妥協せずもっと厳しく店に要求をつきつけるべきです。特に値段の高いものではそういう眼が必要です。
 本来、一つのデザインで数種類の木型で作った靴が用意されていて、試し履きして、踵周辺が程良くグリップされ、土踏まずが心地よくサポートされ、指の側面もきつくも緩くもなく、最長の指の爪先があたらないもので、トップラインが笑わなく、外羽であれば上部の開きが10mmあること、内羽であれば5mmあること、そのような条件でお買いになれば履き心地も外見も申し分ない靴になるでしょう。 そういう靴選びが出来る店が消費者を大事にする靴屋と言えるでしょう。
 最近は、緩めの靴をラクダと言って喜ぶ人が多くなっていますが、ラクではなくフィットすることが大事なことです。またゆるゆるの靴にいっぱい詰め物をするのが履き良さの条件のように思われていますが、木型で靴を作るとき詰め物を入れるようには想定していません。足下にソフトなものを入れると足裏にキズ、魚の目などがある場合に、刺激が緩和されて効果がありますが、足裏がふわふわしていると垂直に身体を支える力が失われて、柔らかいベッドやソファでは疲れやすいのと同じ結果がでて、関節疲労や筋肉疲労をおこし、身体中が疲れでいっぱいになります。踵周辺の緩めな靴にアーチ部分の形状補整だけではフィット感にも限界があります。
 結論は、踵周辺と土踏まずが心地よくグリップまたはサポートされて、指の側面が感触よく、最長の指の爪が当たらないこと、これが履き良さの条件です。
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